「多様性」と訳される「ダイバーシティ」は、現在では「多様性を認め、それぞれが生きて生きやすい世界を作ること」といった意味をも持ち得るようになりました。
労働力アップの意味でも生産性向上を目指す意味でも、また一人ひとりの幸福を追求する意味でも非常に重要な「ダイバーシティ」ですが、このダイバーシティにはデメリットもあります。
それについて見ていきましょう。
ダイバーシティのその影で~逆に負担が増える人もいる
「ダイバーシティで、妊婦さんでも働きやすい世界を」「家族を持っている人が、家族と過ごせる時間を作る」という考え方自体は、非常にすばらしいものです。実際にこのような取り組みの恩恵に預かっている人も、決して少なくはないでしょう。
しかしこのような取り組みを企業側が熱心に行うことが原因で、逆に負担が増えてしまう人もいます。
それが、「家庭を持っていない人」です。
「ダイバーシティの取り組みの一環として、子どもがいる人には残業をさせない」「育休産休をとにかく手厚くする」とした場合、そのような立場にある人を抱える部署の人員が不足しやすくなります。今までは10人で10の仕事をまわしていたのに、8人で10の仕事をまわさなければならなくなるのです。そしてその8人は、「家庭を持たず、時間的に自由があり、そして負担を『押し付けやすい』独身者」であることが多いといえます。
ただ、独身者であっても人によって状況は異なります。恋人を持つ人もいるでしょうし、勉強をしたいという人もいるでしょう。また単純に、「仕事を早く終わらせて休みたい」と考える人もいます。しかし、ダイバーシティによって「多くの人々が働きやすい世界」を目指す場合、このような人たちの気持ちは往々にして無視されがちです。
コミュニケーションエラーが出てくることもある
人はそれぞれ、「持っている常識」「持っている価値観」が違います。ダイバーシティではこのような違いを受け入れていくことを旨としていますが、異なる常識・異なる価値観を持つ人たちが混ざりあうことによって、コミュニケーションエラーが出てくることもよくあります。そしてこのコミュニケーションエラーは、生産性の低下につながったり、思わぬトラブルを引き起こしたりする原因にもなります。
ダイバーシティを考えるうえでは、お互いの常識や価値観のすり合わせが必須です。
これをおろそかにしていると、ダイバーシティで得られるメリットよりも、ダイバーシティで起こりうるデメリットの方が大きくなってしまいます。
ダイバーシティにおけるデメリットを解消するためには、まずは企業側が公平で余裕のある計画を立てることが必要です。しかし企業側だけではなく、そこで働く個々人が「ダイバーシティとは何か」「ダイバーシティを推進していくうえで、だれかを犠牲にしていないか」を考える視点を持つこともまた必要だといえるでしょう。